2017年09月07日

「井戸茶碗一考察」 井戸茶碗を粗質白磁と捉えて

8月26日(土)麗香茶課 特別講座
「井戸茶碗の魅力から探る、日本人の美意識
 〜心に響く茶のうつわとは〜」


「作り手」としてお話しをさせていただきました。

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朝鮮王朝古窯址の陶片、私の井戸茶碗も展示しました。
講座のお話しは尽きることなくタイムオーバー。
井戸茶碗に特化した講座、30名の定員が満席になりました。
お暑い中、お足運びいただき、聴講ありがとうございました。

講座を依頼されたことによって、準備の段階で、私自身、「井戸茶碗一考察」に加えることを、
新たに気付かされました。

1. 井戸茶碗(粗質白磁)「下品」それは両班用だったのではないか、ということと、
2. 粗質白磁の轆轤目は挽きっぱなしで、轆轤目を「消さなかった」こと(手抜き)、
高台内も一削り(手抜き)、白磁(上品-王室用)(中品)の高台は丁寧に削られている。

白磁碗を基本に粗質白磁としての井戸茶碗を考察すると、「井戸茶碗には何故ろくろ目があるのか?」ではなく、轆轤挽きの過程で轆轤目はできるが、それを丁寧に消さなかったのが粗質白磁・井戸茶碗である、ということが言えると思います。

井戸茶碗は白磁の「下品」のもので、両班用に作られた重ね焼きのもの、(粗質白磁)
そして純白磁より精製度が劣る「中品」官需用の「目跡のないもの」で、トチン・ハマに一個置きして匣鉢は使われず焼成されたもの。それらではないだろうか。
轆轤目も消さずに、脇取りをして一気に仕上げてしまう。
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井戸茶碗(陶李作)脇取り
轆轤での水挽き時、切り放す前に削ってしまう。
朝鮮陶磁には、脇取りをしているもののほうが、珍しい。

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左・白磁(中品) 右・井戸茶碗「細川」畠山記念館 蔵
いずれも、同じ大きさで、左の白磁は高台も丁寧に削られ、胎土も細かく精製されている、
しかし、いずれも匣鉢焼成ではなく、窯の炎の影響を受け(窯変)日本人の好む、青と枇杷色の発色が美しいい景色をなしている。
左・脇取り無し。 右・脇取り有り。


胎土や釉薬の精製が粗雑だったこと⇔不純物の効用→梅華皮カイラギ。。
重ね焼きの目跡が見込みにない大井戸茶碗、それらは「中品」(官需用)であった可能性を否定できない。

【王朝管理窯や地域窯に限らず、白磁や粉青沙器などの朝鮮のやきものは、三つに分類できる。
焼く時に施される手間や、使われる胎土や釉薬の精製に応じて三つのランクに区分できる。
王室専用御器 上品
宮中・高位高官用 中品
宮中の一般官吏(両班)用 下品
と思われる。】
(【 】内は、「高麗茶碗 論考と資料」金巴望 より引用 )


-----匣鉢による焼成と直炎のあたる匣鉢なしの焼成で考えられること-----
純白磁(上品)-中級の白磁(中品)-粗質白磁(下品)
匣鉢有(上品)-匣鉢なしハマ(中品)-匣鉢なしトチン(下品)
一つ焼き(上品)-一つ焼き(中品)-重ね焼き(下品)
精製された土・釉薬(上品)-精製が純白磁より劣る(中品)-精製が粗い(下品)
還元焼成(上品)匣鉢による-
炎にふれる(中品)酸化・還元・中性炎-
炎に触れる(下品)酸化・還元・中性炎
 ※中品・下品は窯変がでやすく、炎の酔いがでると酸化の枇杷色発色となる。白磁の還元焼成の失敗ともいえる。
左・還元焼成の白磁 右・中性炎焼成の白磁 
同じ窯・同じ胎土・同じ釉薬・窯の場所のみ違う。
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3. 「脇取り」が、井戸茶碗を井戸茶碗たらしめている。これは前から言い続けてきた。
しかし、すべてではない。

特徴と言われるものや約束は、すべてに共通して表れているわけではない。

それが、井戸茶碗であり、おそらく、
4. 記録に残っているように、飢え死にしそうな匠人が横流しや密売をしていた、これも史実にあること。それで井戸茶碗は日本にしかないのではないか。

5. 白磁をとろうという窯で、不良品(釉薬の精製の度合いがよくないためのカイラギ、土の精製の粗さ、消さないままの轆轤目、丁寧な仕上げを省略した手抜き)、それが井戸茶碗ではないか。

ソウル国立博物館で、ソバンと白磁。
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クッサバル 大井戸の大きさと形
スルサバル 井戸脇 小井戸の大きさと形

【追記】
★「女性」がロクロを挽いていた事実
 陶芸家というと男性のイメージがあるが、女性が活躍していた事実、そして記録によると【奴隷(賎民)】の身分である、
そして教育とは無縁の「文盲」だったゆえ、地域窯の記録文献が残っていない。
しかし、世界のいたるところで「女性」が陶器作りであったことは容易に確認できる。


------------------------ 以下、引用文 -----------------

「高麗茶碗 論考と資料」(高麗茶碗研究会-河原書店発行)金 巴望「李朝のやきものからみた高麗茶碗」※金 巴望 氏 高麗美術館研究所 朝鮮美術史専攻 より。(以下、引用)


『地域窯の窯業が専業であったか、半農半窯であったかは不明である。しかしながら、私は反農半窯が多かったと理解している。
また、男性が力を要する部分を受け持ち、女性がロクロなどの繊細な技術を要するところを分担していた場合もあったと考える。
なぜなら、現在、一六五三年から一六六六年の間に実際にオランダ人が現地にて見聞した記録が残されているからである。一六五三年の八月、オランダの帆船が済州島あたりで難破し、救出されたことがあり、その船員たちは、その後およそ十三年にわたって朝鮮半島の全羅南道に抑留生活を送っている。その際の見聞が船員たちから聞き出され『朝鮮国記』(ニコラース・ウィットセン著)として記録された。
 その中に、(朝鮮の)南海岸には最良の海港がある。同地には多くの男女の奴隷がいるが、皆同国人である。同地には非常に多量の茶が産出する。それは粉末にされ、熱湯にまぜられて、全体が濁るようにして飲まれる。
と記され、さらに陶器についても、同国では陶器がたいへん立派に作られる。特にコップは粗末であるが、(ものによっては)注文に応じて金彩が施されるなど、たいへん珍重され、需要が多い。
と記し、しかも、その大部分は婦人によって作られる。』
と記していることは興味深い。

----------引用ここまで-----------


『井戸茶碗の魅力から探る、日本人の美意識 〜心に響く茶のうつわとは〜』麗香茶課特別講座
当日の講座について、以下の三つのブログでレポートされております。

「井戸茶碗」の魅力を探る、麗香茶課特別講座Cha-No-Yu China 中国茶と和の粋

心に響く茶のうつわとは 神融心酔

「井戸茶碗の魅力から探る、日本人の美意識 心に響く茶のうつわとは」 おうち茶館


お世話になりました。ありがとうございました。
タグ:井戸茶碗
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2017年07月17日

麗香茶課 夏休み特別講座『井戸茶碗の魅力から探る、日本人の美意識』

麗香茶課 特別講座
『井戸茶碗の魅力から探る、日本人の美意識 
 〜心に響く茶のうつわとは〜』

日時 8月26日(土)10:00-12:00
場所 スタジオビブロス赤坂
講師 丸山 陶李

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Facebook イベントページはこちらです。
https://www.facebook.com/events/154302261803972/?acontext=%7B%22ref%22%3A%2222%22%2C%22feed_story_type%22%3A%2222%22%2C%22action_history%22%3A%22null%22%7D&pnref=story
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******以下、公開イベントからの転載です。******

麗香茶課では8月26日(土)に特別講座『井戸茶碗の魅力から探る、日本人の美意識 〜心に響く茶のうつわとは〜』を開催いたします。

「一井戸 二楽 三唐津」とも言われ、戦国大名や茶人、豪商たちをも虜にした井戸茶碗。
16世紀頃に朝鮮半島から渡来した高麗茶碗と呼ばれる茶碗の一種で、日本では、桃山から江戸時代にかけて、侘び茶の道具として賞玩されました。日本人の美意識をもって国宝とまでなった井戸茶碗、なぜゆえに武将や茶人たちの心をこんなにも惹きつけたのでしょうか。

ご自身も長らく茶道に携わり、井戸茶碗や、李朝の粉青沙器を研究し作陶していらっしゃる陶芸家の丸山陶李先生をお招きし、作り手としての視座を交え、その魅力と、井戸茶碗の特徴などをわかりやすく説いていただく講座を企画しました。

今回の企画は茶の湯の世界に留まらず、中国茶、日本茶の枠を超えた「茶」の心に触れることのできる機会です。皆様のご参加を心よりお待ち申し上げております。

【講座内容】
・ 井戸茶碗の特徴と見所
・ 高麗茶碗とは何か?井戸茶碗とは何か?
・ 知る程に面白い、茶碗の「銘について」や「繕い」まで「美」にする日本人の美意識について 
・井戸茶碗の故郷、古窯址探訪と陶片
・現地でのうつわの用いられ方  など

* 講座後、丸山先生の作品の展示、販売もございます。

◆ 講師:丸山陶李氏(陶芸家)
慶尚南道茶碗公募展 審査員
【プロフィール】(陶の栞より)
中学時代に「志野」というその名も美しい白いやきものを知り、大学時代に「高麗・李朝」の陶磁器に惹かれ、古の陶磁器への憧憬は、陶片蒐集から始まり、陶磁器の原材料の探求や古窯址の踏査へと深まり、年を重ねております。
李朝の粉青沙器(粉引・三島・刷毛目等)を基軸としながら、高麗茶碗の美しさに惹かれ、特に井戸茶碗の佇まいには深い精神性を感じ、導かれるままに追究して参りました。
陶の道へと招いてくれた日本の桃山時代の「志野」も、李氏朝鮮時代の「井戸茶碗」も、「白磁」を目指す過程で生じたやきものであることを思いますと、「大和心」に響くやきものとは、「完璧さを誇らず、五感を触発し第六感をも誘い、心の機微に触れてくる触れてくる存在なのではないか」と、感じ入るものがございます。
 茶席において茶碗は、茶碗を選んだ亭主の人格をも映し出し、客は茶碗から亭主の人格をも感じ取ると言われます。
 美しく広い見込みは、すべてを受容する広がりと豊かさを感じさせられ、高台には陶工の魂が宿っているかのようです。
「魂の宿る」茶碗。
「死して茶碗を残す陶工でありたい」と、願っております。

■開催日時:8月26日(土)
■10時〜12時 

■講座料 4,000円 中国茶2種とお茶菓子付

■定員 30名

■場所:スタジオビブロス アカサカ (赤坂または赤坂見附駅より徒歩5分)
東京都港区赤坂4-5-21 バルミー赤坂
https://www.studio-bybros.com/map



■同日開催
同日14時より『茶道具フリーマーケット』を開催いたします。詳細はイベント別記事をご覧ください。

皆さまのご参加をお待ち申し上げております。どうぞよろしくお願いいたします。

浦川園実(企画協力)
加藤多都子
富田直美

タグ:井戸茶碗
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2016年10月25日

高麗李朝の古窯址を探る韓国紀行

高麗・李朝の古窯址を探る韓国紀行〜丸山陶李先生と行く✽井戸茶碗の故郷を訪ねる慶尚南道4日間〜
http://www.sanshin-travel.com/tour/detail.php?sid=1723
日本人に愛されてきた井戸茶碗、今もなお茶人に限らず多くの人々を惹きつける井戸茶碗。井戸茶碗の魅力を韓国・慶尚南道の古窯址を訪ね、現地で茶を点て、現地の土(カオリン)を用いて作陶体験もできるという「専門性の高い」稀有なツアーを、韓国旅行専門の旅行会社「三進トラベル」より依頼を受けて企画しましたが、ツアーが終わり帰国しました。

「高麗李朝の古窯址を探る韓国紀行」で、
古窯址近くの苔のついた砂岩(岩)とホワイトカオリン(鉱物)を頂戴しました。
昨日、蹴轆轤で成形し、本日、削りを入れました。

「砂岩」
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「ホワイトカオリン」
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旅の途中、容姿も焼成も、大井戸茶碗「細川」を彷彿とさせられる白磁茶碗と出会いました。
白磁と言っても、韓国の官窯の硬質白磁とは一味違う、いわゆる軟質白磁に近い手ですが、
窯変が美しく、井戸茶碗のような土味はないものの、そのルーツを探るに十分な茶碗でした。
その大井戸茶碗「細川」に似た白磁茶碗を脳裏に、蹴轆轤に向かいました。

今朝、削りを入れた現地の原材料から挽きあげた拙作、大井戸茶碗です。
焼成前の画像ですが、韓国カオリンの持ち味、土味の美しさが伝わってきます。
自作だから美しいというのではなく、「原材料の美しさを生かす」とこうなるという例として、本当に美しいと思います。原材料の持ち味です。これから窯の中で炎と対話し姿を変え、窯から出てますます美しさで魅了してくれるだろうと楽しみにしています。土味は、高麗茶碗の魅力の一つです。

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高麗茶碗の魅力・井戸茶碗の魅力を語ろうとすれば、土(カオリン)の美しさから目を外すことはできないし、窯変の美しさは、原材料の他に、窯と、窯の焚き方にも秘密を探る鍵が隠されています。どこまでお伝えできましたか、旅が終わり、振り返っております。

非常にマニアックな旅でございましたのに、茶の湯関係の参加者が多く、茶の湯で養われた「眼」で、モノを楽しんでいらっしゃったようにお見受けいたしました。

最後の朝鮮王妃・李方子様は「井戸茶碗」を作らせ(千漢鳳先生)、知的障がい者の施設の資金集めをなさいました。ふと、井戸茶碗の魅力を探る時、李方子様が井戸茶碗を選んだことにも何か感じるものがございました。

こちらの画像は、拙作の井戸水指と、某古窯址の陶片を並べたものです。
釉調が似ています。小貫入の入り具合も似ており(窯の焚き具合がわかります。)、
焼成雰囲気や釉薬にした水土(ムルト)の想像もつきます。
この陶片は、一時的にお借りしているものであり、研究が終わりましたらお返しするものです。
そのような心のつながりの中での拝借陶片です。

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旅の中で、美しいお辞儀に出会いました。美しいお辞儀ができるということは素晴らしいことですね。と、シミジミしております。

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話はツアー初日に戻りますが、
金海国際空港から直行した「東亜細亜文化財研究院」で、
今年7月に発掘されたばかりの粉青沙器窯(大甘里窯址)の陶片を特別に拝見させていただき(撮影不可)、
一同歓声を上げました。

陶片に歓声をあげる私たちのあまりの数寄者ぶりに院長や館員の皆さまも感じ取るものがあったのか、地下室から「これは写真撮影しても大丈夫です。」と、忠清南道から出土した粉青沙器の名品(李朝前期のものであり、高麗青磁末期の釉胎と同じ。美しい!)を持ち出してくださったので、皆、興奮の写真撮影をしました。

割れた口から美しい胎土(これもカオリン質)がのぞいています。

粉青沙器白黒象嵌魚紋瓶子(李朝前期)
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美の探求は続きます・・・。


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2016年10月02日

井戸茶碗 熊川茶碗

井戸茶碗

十月を迎えました。
9月30日に窯出しした青井戸茶碗に紅葉を添えて。紅葉川。

井戸茶碗

来週は、韓国慶尚南道を井戸茶碗探訪のツアーで再訪します。
http://www.sanshin-travel.com/tour/detail.php?sid=1723

熊川(こもがい)茶碗

同じく9月30日の窯出しです。

熊川茶碗


タグ:井戸茶碗
posted by 丸山 陶李 at 17:34| Comment(0) | TrackBack(0) | 井戸茶碗

2015年04月11日

山井戸茶碗

山井戸茶碗
YAMA IDO-CHAWAN
*Meaning of the YAMA (mountain) is rough or wild.
I gave this name to IDO-CHAWAN of this type (my original works)."

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2015年03月13日

餌畚茶碗と井戸茶碗

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こちらは昨年、感銘を受けた餌畚(えふご)茶碗の形に惹かれ、
また、日本の猿投窯の山茶碗にも触発され、
餌畚茶碗の形を受けた茶碗を制作してみたものです。。

粉引餌畚茶碗
KOHIKI EFUGO CHAWAN
"Ehugo" style original chawan is a collection of SEIKADO BUNKO MUSEUM(Tokyo, Japan).
It is a bowl of Chinese Song Dynasty(11-12C).
I was given the inspiration to that bowl.
I was covered with Dipping white clay ceramic technique of Korea Lee dynasty.
Glaze is my original that was affected by the Goryeo celadon.
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餌畚(えふご)と言うと、茶の湯では「唐金餌畚建水」が利休所持として、よく知られている。
「餌畚」というのは、鷹匠が用いる餌入れ、餌畚(えふご)に形が似ていることからこの名があるそうだ。
袋形で上部が開いている。建水としてこの餌畚形は、その使い勝手の良さ、独特の形状と安定感によるところが大きいのではないだろうか。

餌畚という形で、利休が好んだのは、建水だけではなかった。

静嘉堂文庫に、11-12宋時代の白磁「餌畚茶碗」が収蔵されている。
口径16.4cmというから、大振りな茶碗だが、高台内に朱漆で利休の花押がある。
内箱には「えふご」と書かれ、内箱裏には千宗旦の高弟・藤村庸軒の筆がある。
特筆すべきは、この茶碗が高台内の利休の花押が示すように、利休が「見出し茶碗」として取り上げたことであろう。
口縁が厚く、胎土を捻り返しているように見える。
白磁とはいえ、使い込まれて、現在は釉薬の掛かっていない部分は茶色に変化している。
灰釉が掛かっている部分は、細かい貫入が入っている。
どっしりとした安定感のある形、口縁の力強さ。惹きつけられるような茶碗である。


面白いことに、この茶碗の形は、踏襲され、同じ静嘉堂文庫に、
楽家七代楽入作の「餌畚写し茶碗」が収蔵されている。
釉掛かりと言い、胎土の色合いといい、口縁の捻り返しまで、しっかりと写されている。
こちらは、本歌よりも小さ目で、口径15.1cmとある。

以上、二碗の「餌畚茶碗」を見ると、中国宋時代のものが、日本江戸時代に写されて賞玩されてきたことがわかるが、
私は驚きをもって、この形を意外なところで知ることになった。

それは、2013年11月-12月に開催された根津美術館の「井戸茶碗展」であった。

大井戸茶碗・古井戸茶碗・青井戸茶碗と分類され展示されていたが、
青井戸茶碗の中に二碗、餌畚茶碗と形が酷似した茶碗を見た。
釉胎は井戸茶碗であり、土も赤土を用いているようだ。枇杷色とは全く違うのに、井戸茶碗としての風格を持ち合わせている。

一つは、松平不昧公が所持し愛用した青井戸茶碗・銘「白露/異風」(個人蔵)である。
口縁が厚く、高台も広く、利休が「見出し茶碗」として所持していた「えふご茶碗」の形である。
図録には「口縁が大きく歪み、高台も揺らぐように見える茶碗は、不昧が好んだようで、楽山焼などで写しをさかんに作らせている。」と解説があった。
「異風」の銘が、この青井戸茶碗からくる雰囲気が、多くの井戸茶碗と形や作りから受ける雰囲気が異なるものがあるからだろうか?と想像せずにはいられなかった。

もう一碗は、同じく井戸茶碗展で展示されていた青井戸茶碗・銘「涼及」(根津美術館蔵)である。
口縁が捻り返されて厚く、さらに指または、なめし皮、あるいは布で、口縁はやや細く押さえられている。
青井戸茶碗・銘「白露/異風」と同じく、「えふご茶碗」を彷彿とさせられる個性的な井戸茶碗である。

古くは中国・宋時代のやきものが、
韓国・日本と、各々を代表するやきものの中に、繋がっていることは、偶然ではなく、
この餌畚茶碗という形に、独特の美を見出した茶人たちの審美眼によるものだろうと考えている。




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2013年12月14日

井戸茶碗の故郷から

2011年に韓国慶尚南道鎮海市頭洞里の熊川古窯址を踏査させていただき、お世話になった崔熊鐸先生(熊川窯)が、井戸茶碗の故郷/頭洞里から根津美術館で12月15日(日)まで開催されている「井戸茶碗展」に来日。

昨日は、根津美術館にご案内した。

来日前日に、新しくトン窯(鉄砲窯)の築窯を終え、翌12日に成田に到着。今日14日は帰国なさった。
「井戸茶碗展」を見るためだけに来日されたのだ。

根津美術館への往復、電車や地下鉄の中でも、井戸茶碗に関する話ばかりして、とても有意義で楽しくご一緒させていただいた。

喜左衛門や細川との再会を果たして、「とても気持ちがいいです。」と先生は仰った。
井戸茶碗の話をしていると、先生との時間はとても短く感じられた。

青井戸茶碗や小井戸茶碗の産地についての考察、頭洞里を産地とする大井戸茶碗の考察は、大変興味深い話だった。

「400年前に井戸茶碗を制作した同じ土(カオリン)を新しく掘ったので(三白土ではない)、その土を使って井戸茶碗を作ってごらんなさい。新しいトン窯で一緒に焼きましょう。」と仰っていただいたので、ありがたくご好意を受けることにいたしました。

崔先生が今年三月の展示会で発表した小井戸茶碗「老僧」に良く似た井戸茶碗を、韓国から同行なさった僧侶がipadで見せてくださったが、とても素晴らしかった。おそらく、喜左衛門と同じ梅華皮をコンスタントに表現できる井戸茶碗作家は、現在崔先生だけではないかと思う。

オリジナルの井戸茶碗について、先生の考察、現地での原材料や、焼成、釉薬についても、熱心に伝授してくださった。オリジナルの井戸茶碗と同じカオリンと、新しいトン窯での井戸茶碗の焼成、また心躍る未来への希望を頂戴した。

根津美術館で崔熊鐸先生とお弟子さんの徐さん、同行した馬山のお坊さんが撮影してくださいました。
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posted by 丸山 陶李 at 21:06| Comment(0) | TrackBack(0) | 井戸茶碗

2013年11月06日

小井戸茶碗

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小(古)井戸茶碗/陶李作
この井戸茶碗は、韓国に嫁いでいきました。
今はどうしているか、たまに思いめぐらします。

根津美術館で74碗の「井戸茶碗」が展示されています。
根津美術館 特別展
【井戸茶碗 戦国武将が憧れたうつわ】
2013年11月2日(土)〜12月15日(日)
http://www.nezu-muse.or.jp/jp/exhibition/index.html

根津美術館の井戸茶碗展から帰宅。
「井戸茶碗一考察」のページ更新をしていないので、今日もブログに記しておこうと思います。
開館と同時に伺って、昼食もとらずに4時間半、74碗の井戸茶碗と対峙してまいりました。

キリシタン大名・大友宗麟の書状が展示されており、
大友宗麟もめでたく高麗茶碗を手にした喜びを綴っているのですが、
学芸員さんに質問したところ、大友宗麟が手にして喜んだ高麗茶碗が井戸茶碗であったか、
どの高麗茶碗であったか、どの井戸茶碗であったか、については
謎だそうです。秘密ではなく、わからないままだそうです。

名だたる戦国武将がことごとく魅せられた「井戸茶碗」の魅力が堪能できることと思います。
根津美術館さんのご苦労で個人蔵のめったに拝見できない井戸茶碗が30点以上展示されておりました。
知られた井戸茶碗より美しい物や、見どころのあるものもあり、見逃せない貴重な展示だと思います。

大井戸茶碗「細川」も、畠山美術館の展示の際より見やすく、より美しく四方から拝見できます。美しかった。

私が個人的に好きな井戸茶碗の一つ、、
古井戸茶碗「老僧」は、12月2日の展示替えから拝見できるとのこと。
「老僧」を拝見したいので、もう一度伺うつもりです。

根津美術館の井戸茶碗展で図録を十部購入。お世話になった韓国の井戸茶碗作家の先生方に送るつもり。展示では「高台」は一切拝見できません。図録を買わないと「高台」は見ることができません。

これだけ(74碗)の井戸茶碗を見た人は、「こうでなくちゃ!」って言えなくなるはず。土も様々、釉薬も様々、カイラギさまざま、形も作行きも様々。ロクロ目も見込みも茶溜りも高台も様々。
緑釉系統の雰囲気を感じさせるものから、白磁に近い井戸茶碗まで、様々です。
展示は大井戸・小井戸・青井戸と分類されていますが、個人的には、「土」によって分類して展示したら、井戸茶碗の変遷もわかるような気がして・・・こんなマニアックな人はいませんね(笑)。

国宝 大井戸茶碗、喜左衛門の見込み。
脇取りの削りのせいで、落ち込んで鏡のようになっていた。見込みが少々生焼け気味に見えた。
370gの重量表示あり。

大井戸茶碗の中でも殿様の風格、細川。美しかった。重量表示460g。

有楽は450g。
すべてではないが、重さが記載されており参考になる。

喜左衛門の見込みを拝見して、焼成された時の窯内の置き場所を考えました。

もう一つ、火間があるでしょ、横一文字に。喜左衛門は、脇とりで薄くなってしまった器胎なので、柄杓掛けで釉薬を掛けたと思います。だから見込がちょっと汚い釉流れになっている。

喜左衛門が柄杓掛けで釉薬をかけたとしても、他の井戸茶碗もすべて柄杓掛けとは言えない。

釉薬掛けの際の指の使い方で、釉なだれができているものを見ると、わしづかみにして、ほとんどの井戸茶碗は釉薬を掛けているのがわかります。

根津美術館の井戸茶碗の傷についての説明で、「切れやすい土を用いている」と書かれていた。「切れやすい土」も、それなりの説明となっていると思うが、それ以上に考察できることは、「窯」の冷め方。冷風が器胎にあたった、窯の隙間から冷風がはいった。私には切れやすい土より、この方が納得がいく。切れがはいっている井戸茶碗の方向と切れ方がすべて同じであるのは、一考に値する。私も窯の温度が300℃くらいになった時、取り出した茶碗を水にジュッと浸す。これで古色付けをしてしまうのだが、そうすると、あのような縦方向の切れが生じやすく、窯の冷め具合と取り出すタイミングは、いつも大変気をつかう。
切れやすい土(土とはいいうが、カオリン質の半磁器、軟質白磁土)、であっても、窯が急冷にならなければ、あのような切れ方がすべてに現れることはないと考えている。

「井戸茶碗展」の図録に一碗一碗を拝見しながら、重量や気が付いた事をメモしてきたので、繰り返しメモを読みながら、各々の井戸茶碗の写真と重ね合わせているのですが、図録の解説、歴史的由来など茶の世界でいかに賞玩されて愛されてきたかということを感じられ、勉強になるのですが、

どうやら、現在の学者の意見であり著名な方々の論であり、現在の作り手や原材料の分析値ではなく、原材料の性質を知って試行錯誤している作り手たちの意見は全くとりあげていないですね。
驚いたことに、ある井戸茶碗の釉薬の解説に、
「枇杷釉をかけた後に、白釉を掛けて二重掛けしている。」とありました。
ありえない。。。正直なところ、図録の解説にはひっくり返りそうになるような「わかってないな。。。」ということが書かれていたりします。

これが現在の日本の高麗茶碗や井戸茶碗をとりまく学者たちの狭さを露呈しているように思うのですが。土と釉薬、原材料と窯と焼成について、もっと論考が欲しいところです。

また、井戸茶碗の焼成についても「甘い焼き」だからもろい、という図録の指摘。これはすべての井戸茶碗には当てはまらないのは、作り手だったらわかるはず。1200℃で生焼けの陶片を頭洞里を訪問した時、見せていただいたし、韓国の作家さんたちは、決して甘い焼きをしていない。高台内の梅華皮が生焼けになるのは、窯の火の回り具合。つまり「置き場所」によるもので、すべてとはいえない。現にこの度の展示には、釉薬が大変よく融けて梅華皮も融けているものが何点もありました。私もかつてはゼーゲル7あたりで焼成していましたが、今はゼーゲル8から9あたりになる高温焼成です。

 図録には、最新の井戸茶碗の産地や考察が記されています。頭洞里や晋州、宝城についても触れられていました。

 いつも思うのですが、いまだに「枇杷釉」という呼び方を井戸茶碗の釉薬に対して使用しているのですが、「枇杷釉」という呼び方は間違いだと指摘する方はいないのでしょうか?韓国の井戸茶碗作家の先生のパンフレット作りをお手伝いした際にも、「枇杷釉」と日本語版に訳されていたので、「枇杷釉ではない」ことを作家や弟子に説明すると、「その通り」と仰って納得していました。日本の学者の影響は、韓国にも及んでおり、再考を促したいところです。

 図録の解説を読み終えましたが、一時は井戸茶碗は「祭器」だという説がありましたが、今は懐疑的にとらえられてました。


 私は土は慶尚南道のカオリン鉱脈が、ずっと続いている地形を見てきましたが、「あの土」が、用いられていることがわかります。井戸茶碗に関しては、さて、どこの窯(韓国の産地)か?ということになると、「対馬」を経由して晋州と行き来がずっと続いていましたから、日本に来た李朝の陶工は土を求めて晋州に往復したことでしょうし、また鎮海や釜山、金海など慶尚南道のあのカオリン鉱脈の土(石)つまり原材料を日本に持ち込むことを李朝の陶工たちは考えただろう、と推察しています。薩摩焼のように「火ばかり」ということも大いに考察できると考えています。根津美術館では、2013年11月9日(土)午後2時から3時30分 赤沼 多佳氏(三井記念美術館参事) による「井戸茶碗の魅力 −その種類と産地をめぐって」という講演も予定されているので、出席なさった方は、是非、そのお話の内容を教えていただければと思います。私は、生憎この日は、北京と磁州窯踏査で中国へ渡航しており、講演会には申し込めませんでした。

posted by 丸山 陶李 at 12:07| Comment(0) | TrackBack(0) | 井戸茶碗

2013年10月22日

細川護煕展

細川護煕展
2013 Autumn Morihiro Hosokawa
Art Exbition

今日ご案内と図録を頂戴しましたので、
紹介させていただきます。

hosokawa018.jpg

2013年11月2日(土)〜11月4日(月・祝)
午前9:00〜午後5:00

古美術 柳孝
〒605-0088
京都市東山区大和大路通
新門前上ル西之町195
TEL 075-551-1284

図録には軽井沢に築窯した穴窯での自然釉作品、信楽・伊賀など。
湯河原の窯で焼成した、楽茶碗・井戸茶碗。
素晴らしい作品が紹介されていました。

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今年春、日本橋「壺中居」での個展では
「とうとう来るところまで来た。」と仰っていた井戸茶碗。
韓国の原材料を手に入れられて、実に良い味わいを醸し出していたのを思い出します。
細川護煕氏のとことん追求する姿勢が、作品それぞれに現れていました。

京都、柳さんでの個展も、また新しい作品揃い。楽しみです。



posted by 丸山 陶李 at 17:46| Comment(0) | TrackBack(0) | 井戸茶碗

2013年10月09日

井戸銘々皿


井戸銘々皿に「茶せん」(静岡のお土産)を添えて。
IDO small plate with rice cracker(cha-sen).

秋の色。
「つくば」という品種の栗。
「次郎」という品種の柿。
「抹茶」の緑。

井戸の風合いが秋の彩に似合うと感じるのは、私だけではないはず。

井戸銘々皿

鴻鴈来 こうがん きたる

燕が南へ帰る頃、入れ違いに雁が渡ってきます。
遠くシベリア、カムチャツカから海を越えてやってきた雁は日本で越冬し、春の訪れとともに北へ帰っていきます。清少納言が『枕草子』に記したように、隊列を組んだ雁の群れが空高く飛んでいく光景は勇壮であると同時にしみじみとした趣があり、日本人の心を搔きたてます。(きょうの暦より)


posted by 丸山 陶李 at 13:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 井戸茶碗