2012年11月06日

慶尚南道・泗川を訪ねて[4]

慶尚南道といえば「韓国陶瓷史の研究」
の中でも、粉青沙器や白磁等、「民窯」跡が多い地域で、昨年、訪問した頭洞里を含む、晋州エリアで、そして民窯であるがために、官窯と違い、記録が残されているものが少ないエリアでもある。

私は、地図で泗川市を探した時、まず晋州や山清に隣接していることと、頭洞里にも近いことが頭をよぎった。あの慶尚南道のカオリン鉱脈地帯だ。

10月25日の学術会議が終了し、ステージの上で講師の皆さんと挨拶を交わしている時、一人の紳士が私に質問してきた。通訳さんもステージにまだいたので即座に通訳してくれた。

その男性は、「井戸茶碗の作られた所はどの窯だと思いますか?」と尋ねてきた。

私は、頭洞里の窯跡には行っているが、他の窯跡には行ったことがない。そして、どの窯址にしろ、井戸茶碗だけが焼成されていたわけではないということは、窯址の出土品を見れば一目瞭然のことであって、どこか一つだけを井戸茶碗の焼かれた窯だという判断はできかねる、ということを通訳さんに伝えていただいた。(しかも私は研究者ではない・・・。)

頭洞里を訪ねた後、私の脳裏にいつもあるのは、慶尚南道のカオリン鉱脈が続いているということは、梅華皮のある陶片が採取されたからと言って、そこだけで井戸茶碗が焼かれたのだろうか?この特徴のある「土」が採掘できるところならば、どこか他の場所でも梅華皮のある井戸茶碗(に似た)陶片の出土される可能性は多いにあるだろう。と、いうことだった。

泗川を訪問するにあたり、この地域の古窯址があれば足を運んでみたい、と思っていたが、あいにく時間がとれなかった。

ところが、泗川在住の陶芸家の奥様から、一冊の本と手作りの布袋に入った井戸ぐい呑をプレゼントされたのだ。それは、26日の審査の日だった。帰国するまでは、時間もとれず、その本を開くことはなく、スーツケースに入れたままにしておいた。

茶碗公募展のカタログや、学術会議の資料など、他にも持ち帰ったカタログや本があり、軽めに荷造りしてでかけたスーツケースも、やはり今回も書籍でいっぱいになり、重たくなってしまった。

いただいた本の一冊。韓国古陶磁研究会の趙氏から頂戴した「酒器展」の図録。帰国後、ゆっくり拝見したが、逸品を収集していらして、素晴らしい李朝古陶磁にうっとり。

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続いて、泗川市在住陶芸家の金南珍氏の奥様から頂戴した「千年の魂 高麗茶碗」と金氏が発見した泗川の古窯跡近くの土と石で作った井戸ぐい呑。
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この本を繰り返し読ませていただき、前掲の「韓国陶瓷史の研究」や他の資料などと照合しながら、井戸茶碗は、はたしてどこで焼成されたのか?ということについて考えている。泗川と日本の対馬、そして九州と、当時日本に招聘された陶工たちは、日本にだけとどまっていたのではない、日本に来てからも、対馬を係留地として土を持ち帰るために何度も祖国の地に帰っている。その痕跡があることが確認できた。ロマンは広がる。私は大井戸茶碗に関しては、ある特定の人物が韓国の土を持ち帰り、日本で焼成したものかもしれない。。。と直感的に思っていることがあったので、氏の著書は、大変、参考になっている。

そして、韓国古陶磁の中でも、私が惹かれて小さなコレクションをしてきたものたちがあるが、それらの胎土と釉薬の特徴的なものが発生してきた歴史にも触れてあり、「やはり、私が好きなものの理由は、土とこの素朴な釉薬が連綿と連なってきていたのだ。」とわかり感慨深いものがあった。

メモ代わりに、それらの釉薬について記載しておくと、
「緑釉」「黒釉」「緑青磁」「黄瓷」「粉青磁釉」「伊羅保-チェ釉」「井戸釉」そして「白磁釉」とつながる。

金氏の著書から、金氏が用いている土の採掘現場の写真です。
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次に紹介する画像は、「宝城粉引」の茶碗。これは古陶磁コレクターの趙氏に、「一度でいいから宝城粉引をこの手にして見たい。」と申し上げたら、「明日、もってきます。見せてあげます。」と現物を持ってきてくださったのだ。粉引の火間に釉薬がかかっていないこと、そして実際に触れてみて、土を見なければ白磁と見紛うほどの焼きあがりと、育ち具合を堪能させていただきました。
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これは頭洞里の第2号窯(第1号窯より大きな登り窯)で趙氏が採取した枇杷色の土で焼成された梅華皮のある高台陶片。
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審査日の翌日は、金海で開催されていた「金海粉青沙器祭り」に大雨の中でしたが、立ち寄りました。
金海の一日は、また改めて・・・。
posted by 丸山 陶李 at 23:31| Comment(0) | TrackBack(0) | 夢は枯野を
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