2011年09月22日

原料屋の神様

「私にとって 7月21日は とても大切な日である。
私が こうして陶芸家として 生きていられるのは、本当に多くの人の支えがあったからである。
誰か 一人欠けても、今の私は ないだろう。
そんな中 私に最も 力を与えてくれたのが、熊谷忠雄。
この人の命日が 今日である。」

小川哲央さんのブログから、引用させていただきました。

この文章を発見して私は胸にこみ上げるものがあった。
小川さんとは一度、お電話でお話させていただいているが、
熊谷陶料を創設なさった熊谷忠雄氏が最後にすべてを託していった人だった。

私は仕事柄、直感だけはかなり働くことを自分で認識している。
小川さんの文章に、「心」の真実なる思いを感じた。

生前、熊谷氏とお目にかかった際、
「わしは、誰(作家)がうちのこの原料を使っとる、と言うのは大嫌いなんじゃ。」
と仰っていた。明治の人の気骨を感じた。

一筋に歩んだ方だからこそ、作家との信頼関係ということを大切にしている方なんだ。
その時、私はそう直感した。

多くの商売人が、「これを使ってあの作品を●●さん(作家名)は作っている。」
というように宣伝に使う方法を見かけるが、私には、耳に心地良くない。

最近、WEB上でたまたま読んでしまったのだが、
熊谷さんの大切になさっていたポリシー、
いわば作家との信頼関係を無視し、作家の悪口・批判等を自分が神様にでもなったかのように
裁き口調で吹聴している人がいるようだ。

つきつめていけば、熊谷さんも大した人ではなかったと言わんばかり、
自己愛天狗の権化である。

胸糞悪いとはこのことだ。

尊敬して、お付き合いし、ご示唆をいただいた方だったからこそ、
少しでも、熊谷氏を軽く言う人には
「あなたはだから何者だって言いたいわけ?」と腹の底で、感じてしまう。
私にとっても原料屋の神様だった。

熊谷氏だって商売だったよ、と言われればそうかもしれないし、否定するほど氏のことを知っているわけでもない。ただ、自身の実体験と直感により、

熊谷氏は、作家の影の立役者となり、自分の業績として有名作家の作品を誇ることは決してなかった。
同様に、「この土は●●がロクロでは挽けなかったんだ」などと作家をこき下ろすようなことも決して仰らなかった。尊敬していた理由の一つでもある。

私は、小川哲央さんが、今年7月21日に綴った文章と出会って、
はっきりと、そのことを再度直感した。
「口で身を滅ぼす」ことを肝に銘じることは、商売人としての心得でもあるし
また、どの人にとっても人間同士の信頼関係を構築できる人かどうかを推し量る一つの天秤ともなろう。

熊谷氏が亡くなってから、ある方からお手紙が届いた。
こう書かれていた。
「いつまでも社長(故・熊谷さん)の愛した陶芸家のための熊谷陶料であります様に
 社長が見守ってくれる事を信じて!!」


恩人のひとり、熊谷忠雄さんのご冥福を祈ると共に、
どうぞ、この手紙にしたためられた当初の思いが、叶いますように。

先日、焼成した志野茶碗や志野ぐい呑は、熊谷さん自身が私に教えてくださった、
その焼成パターンで焼いたものだが、
頂いた資料に残る熊谷さんの筆の跡を追いつつ、
教えていただいたことを、実験できる環境になった今、あらためて志野という焼き物に
私の陶芸の原点を感じている。


teiden 001s.jpg
台風一過。真っ暗闇に輝く、隣町と航空機の光。

我が家の一帯は6時間も停電した。
夜にこのように長い停電を経験したのは、これが初めてかもしれない。
停電すれば、水も出ない。
窓辺から、暗闇の夜空を眺めて、成田空港へ着陸しようとしている航空機が何度も旋回しなおし、
地上へ着陸する許可を管制塔から指示待ちしている様子を見ていた。
停電だからこそ、いつもと違う光景が目にはいったのだろう。

航空機の放つ、赤と緑の光。
5分ごとに世界中から航空機が成田空港に発着する。
台風の地上の状況を受けて、空を何度も旋回している航空機と管制塔のやりとりが実に見事だと思った。

そうしている内に、震度4の地震が茨城県沖で起きた。
台風・停電・大きな揺れが重なった一日だった。

明日は、暑さが戻ってくるらしい。
窯焚きも、今月中にもう一度する予定で、忙しない。
脳裏をかけ廻る今日の様々な思いも、晴れ晴れと清々しく浄化されるのは
いつのことだろう。

posted by 丸山 陶李 at 04:12| Comment(0) | TrackBack(0) | 志野・鼠志野
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