2010年12月18日

井戸茶碗一考察・窯なりに

九月の丸善芸術祭で、ある茶道家の方から貴重な示唆をいただき、私自身も、そのご示唆については気になっていたことだったので、思いつく一点の井戸茶碗の釉薬の調合を変えてテスト焼成した結果、思うとおりの梅花皮の色がでたのですが、その後、「果たしてこれは、釉薬の成分を変えたからだろうか?」と自問自答することになりました。

あるご示唆とは、「梅花皮の白色」についてだったのです。
「もっと白い梅花皮」
梅花皮の出る釉薬の調合、そして土との兼ね合い、小貫入、この三点については、「こうすればこうなる」というデータが得られていたのですが、梅花皮の白色が抜けてしまう、透明性を帯びることに私の釉薬の融点をあげてみることを第一に考えて調合しなおした梅花皮のでる釉薬をテストしてみたのです。

私の釉薬は、現在、天然の土灰・藁灰・長石・土石が基本で、釉薬で色をださずに、土の色を生かす方向に的は絞られてきています。

裏山の土を使って作陶できるような環境なら、土を選ぶこともなく、その土を生かした制作に絞られてくる。逆説的に言えば、その土しか使えない中で、どう生かすか?という課題をもって取り組んできたのが、かつての窯業地の陶工のあり方だったのでしょう。反面、羨ましくもあり、ご苦労も多かったことだろうと察するのです。

私も、できたら原土から土作りし作品に土を生かしていきたいと思ってきましたが、正直、茶碗に関しては叩き土を使いたく、アルバイトを頼んで原土を叩いてレンガですり潰してもらったこともありましたが、他の灰作りも含めて、この作業をしていると一年のほとんどが土作りで終わってしまいます。そこで、原土を取り寄せ(できたら叩き土で)、その土を主体に土をブレンドするという現在のやり方になってきました。

今でも、単味で使える土、複雑な化学製品を用いた調合ではない天然の灰と土を生かした釉薬を基本として探し、焼成を繰り返しています。

唐津には唐津の。萩には萩の。備前には備前の。美濃には美濃の。枯渇しそうな土もあれば、まだまだ土を提供し続けてくださる土堀りさんがいて、本当にありがたいと、まず土を提供してくださる、土石を提供してくださる皆さんに感謝なのです。信頼できる土堀さんは、決して混ぜて調合した土石を提供してごまかさないことが嬉しい反面、限りある資源、失われつつある資源ですから、成分を同じにしたブレンド土が安価で手に入るのもありがたいことではあります。「この土で!」とこだわれるような土が見つかると一安心して、制作に励めるのですが、土石も土もロットにより微妙に変化を見せるのですから、安定を求めるのは二の次、その前に基本的に用いる土と土石が決まれば、裏山で土が掘れない私には有り難いのです。

井戸茶碗について、上記の土の調合は十年来、大きな変化なく幸い同じ原料が手にはいってきました。釉薬の原料も仕入れ業者を変えても、ほぼ同じものを使用してきています。
梅花皮も得られたし、小貫入も同時に得ることができました。量産品のように、いつも同じ茶碗が窯出しできるか?というと、こればかりは、不安定そのものです。まず私は最大限の安定は求めていないし捨ててきています。

己の轆轤技術一つとっても、まだ課題は残っているのです。果てしない先行きですが、自分で得てきたものは確実に体に沁みて涵養しているということがわかります。これも有り難いことです。時間がかかることですが、求めているものがある以上、時間がかかることも今は自分との対峙と受け入れています。

白い梅花皮の話しに戻りますが、融点を上げるために、そして白さを得るために、藁灰の添加量をあげて白さを得ることができました。小さなガス窯での焼成です。しかし、藁灰の添加を多くすると、小貫入が得られないのです。もちろん、土も釉薬の調合も藁灰の添加量のほかには変えていないのです。小貫入については、よく焼けて融けているほうが小貫入はでるし、生焼けの井戸茶碗で梅花皮を呈したものでは小貫入はでていません。やはり胎土と釉薬と焼成の三つの条件があって初めて小貫入も得られるものだと思います。貫入自体は、時が経つに連れて後貫入が増えていくことも忘れてはならないでしょう。

そこで、窯について、あらためて考えなおしました。
「窯なりに」と言われますが、窯の燃料の違いはもちろんですが、炉壁の厚さや窯の構造も、そして焼成パターンもそうですが、「冷まし」が、とても大切な条件に入っていることも、窯焚きの知る人ぞ知る知識・経験でしょう。

かつて釉薬のテスト焼成のみに明け暮れた十数年前、私は電気窯しか持っていませんでした。その頃のデータは、釉薬の基礎を固めるのに、私にとって貴重な資料となっています。
現在は、メインは灯油窯、そしてテスト焼成は小さなガス窯、電気窯は上絵付けや金彩にのみ使用しています。

メインで使っている灯油窯は、志野を焼くには大変適しているような、炉壁の厚い窯ですが、灯油窯であるため、志野のような長時間の還元焼成には苦労します。ガス窯として改造してもらうことも考えたのですが、やめました(笑)。
薪窯では、焚いた時間・日数と同じくらい冷ましに時間をかけろ、と学びましたが、実にこの灯油窯は、20時間焚いたら20時間冷ましても、まだ熱いのです。「後窯」です。火をとめた後も、徐冷ですから、じわじわと冷めていくのです。

韓国で井戸茶碗を焼いている千漢鳳先生の窯焚きは18時間位のあっさりとした窯焚きです。さっと焼いてさっと冷めてしまう。薪窯です。この事をちょっと思い出したのです。

今までメインの灯油窯で焼成してきた私の井戸茶碗は、梅花皮が不透明で抜けていました。ガス窯で、テスト焼成した井戸茶碗とぐい呑みは、温度計が1,250℃をしめしてから止めたにも関わらず、まっ白な梅花皮を得ています。

後窯の効用を計算してメインの灯油窯の火を1,200℃で止め(ゼーゲル6a)ても、徐冷の窯ですから、そのままですと火を止めた後の窯のカロリーで窯を開けた時にはゼーゲル8番も倒れていたこともしばしばあります。「後窯!これだったのかもしれない」と灯油窯の焼成後、ダンパーもドラフトも全開したまま、あえて急冷を狙ってみました。砂目の多い井戸茶碗の胎土は急冷でも冷め割れを起こすことはありません。それでもなお、梅花皮は不透明によく融けて白色が抜けてしまうのです。

ガス窯の焼成では1,250℃を温度計が指した時に火を止め、数時間後には300℃くらいに下がるほど冷めます。小さな窯と大きな窯、急冷の窯と徐冷の窯。その違いででてきたのが、梅花皮の白さでした。

テスト窯で白い梅花皮を得た際に、火の回りの悪い場所に置いたぐい呑みは梅花皮が美しくでていますが、釉薬が融けず生焼け状態でした。この梅花皮が生まれても、生焼けだったぐい呑みを灯油窯の本焼きの時に入れておいて結果を見ると、やはりガス窯でまっ白な梅花皮を得ていたのに、梅花皮は残っていますが、不透明に抜けた色になっていたのです。

窯は窯なりに、冷ましも焼きのうち。と言いますが、
このあたりに、白い梅花皮を残す秘訣があったのですね。
私は、白い梅花皮も、不透明な抜けた梅花皮も、好きなのですが、白い梅花皮を化学薬品(ジルコンなど)でだすようなのは嫌ですね。

梅花皮の生まれる調合(あるいは長石などの原材料土石)についても、茶碗全体に梅花皮を出すのは簡単です。削った場所のみに梅花皮のでる調合、あるいはそういう性質の調合(あるいは単味でそういう性質の土石があるかもしれません)が井戸茶碗の梅花皮のむずかしさでしょう。

生焼けで出る梅花皮ではなく、しっかり焼けて梅花皮も小貫入も出る焼成、そして梅花皮が白く景色を呈する焼成と冷まし。釉薬の調合を変えることではなく、こんなところに、ご示唆のポイントがあったのではないかな?と芸術祭での売上を、ほとんど原材料の仕入れに費やして思うこの頃です(笑)。

梅花皮の生まれる焼成(ある温度の頃に梅花皮が出てきたことが見えます)、梅花皮の残る焼成、梅花皮の美しさを残す冷却。こんなポイントがあると思います。これらの条件に合う土と釉薬という発想も逆に追って考えることが出来ると思います。

ガス窯で梅花皮がでた井戸ぐい呑み二景
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2009年1月の井戸茶碗たち
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白さが抜けた梅花皮
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posted by 丸山 陶李 at 04:08| Comment(0) | TrackBack(0) | 井戸茶碗
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