2010年10月08日

茶碗を慣らす

「抹茶茶碗として長く使っていると、茶碗に茶が染み込んでいって器の風情が変化していきます。簡単に言えばそれが茶心です。茶の湯ではそれを、茶碗を慣らすとも申します。」(「神の器」より)。

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陶李作 平井戸茶碗の高台(丸善芸術祭で展示)

丸善芸術祭を終えて、井戸茶碗「俄羅奢」の共箱も届き、
発送を終えました。
お届けした方から嬉しいメールが入りました。
私のクリスチャンネーム「Maria Gratia(ガラシャ)」と銘を付けた井戸茶碗を、

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『ローランサンの絵のような上品な淡い栗色のボディに星屑のように散りばめられた梅華皮。
手取りは初めて胸にかき抱くみどりこのようにふわっとした軽さ。
予想に違わぬ逸品でした。(略)私にとって『俄羅奢』はまさに『『聖寵』(神の恵み)』です。

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私にとっても神の恵みである井戸茶碗です。
窯焚き・窯出しの度に、「神との共同制作」という思いが深まって参ります。人智を超えた何かが土と炎の対話の中で起こっているのです。いくら科学が発達したからと言っても、窯焚きに関しては、予想通りに行かない作品も多々あります。

不思議なご縁ですが、「俄羅奢」の誕生日は2009年1月11日なのです。
窯出しは12日でした。
この窯では、梅花皮が見事な茶碗がたくさん生まれました。
半分以上は、割ってしまいました。
残った20碗ほどを、保存しておいたのです。
その中でも、展示できるものは数碗しかありません。
もちろん「大井戸茶碗」は一つもないのです。

丸善芸術祭で、井戸茶碗を展示しておきたいと、会期直前まで頑張ったのですが、結果は「形良けれど、見所なし」でした。窯の神というよりも、この最後の窯焚きでは釉薬の女神が私を惑わしたというようなことが起こっていました。

そこで芸術祭直前に、これまでの私の井戸茶碗への歩みとして、命名しなくても、井戸茶碗を展示してみようと2009、2010年
の窯出し後、保存しておいた井戸茶碗を何度も見直してみました。

「井戸茶碗」という思い込みの中では、男性的な潔い形、殿様のようにどーんとした存在感。上品な枇杷色(枇杷色といっても落ち着いた薄茶にやや赤みがさした色を、私は求めています)など、私の中にもあったのですが、

形が比較的、女性的で、高台もそそり立つほど高くない、落ち着いた形の井戸茶碗が一つ目に止まっていました。
三点、丸善に持って行こうと選んだ井戸茶碗の中の一点が「俄羅奢」だったのです。

しかし、前面にある釉雪崩が時に激しく、裏は静かな景色なのに、ガラシャ夫人の信仰を貫いた激しい一面を彷彿とさせるものがあるな、と、じっと「俄羅奢」を見つめてみたのです。

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井戸茶碗「俄羅奢」

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井戸茶碗「俄羅奢」高台

「井戸茶碗」の逞しい男性的な形や「井戸茶碗」への皆さんの「思い込み」を察すると、丸善の展示には持って行かないでおこうかな?と、かなり迷いました。なんども、保存している箱に戻したのですが、次の日になると、また保存箱から取り出し、徐々に「俄羅奢」と命名し、この茶碗を「私の井戸茶碗」として見ていただこうという気持ちが固まったのでした。

手とりの軽さと、丸い碗形(わんなり)の俄羅奢は、女性であった「ガラシャ夫人」にふさわしいかもしれない…。なにより、私の霊名ガラシャを命名するのに、女性的で、母性を感じさせる井戸茶碗はふさわしいかもしれない…。私の作陶のテーマには「十字架・母性」があるのだから。と逡巡しておりました。

しまっては出し、出してはしまい。
あの井戸茶碗「俄羅奢」に何度も呼ばれたわけです。
「私を展示して」「俄羅奢と名づけて」と茶碗が話しているようでした。「俄羅奢」との長い対話の末、ブログで写真を紹介し、丸善芸術祭で、「私の井戸茶碗・俄羅奢」として発表したのでした。

手持ちの仕覆(御物袋)に大切に入れ、発送いたしました。
いつまでも、俄羅奢を大切に愛用してくださいね…と、娘を嫁がせる心境でもありました。
「井戸茶碗・俄羅奢を慣らしていただけますように」
「育ててくださいますように」

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カトリック教会の某司祭から、「高山右近の列福の動きが具体化してきており、おそらく五年後には、右近が列福されるだろう。」
という情報をいただきました。
それまでに、私の大井戸茶碗「右近」が生まれてきましたら、奉献したいと思います。

これからしばらくは、「大井戸茶碗・右近」を目指し、作陶を、そして地道に精進を続けて参ります。







posted by 丸山 陶李 at 17:12| Comment(0) | TrackBack(0) | 制作過程・窯出し作品
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