2015年02月02日

茶道と十字架

初個展以来、私の作陶テーマの一つは「茶道と十字架」でした。
今年は、ユスト高山右近の帰天400年であり、また明日は右近の帰天日の2月3日。
カトリックでは列福間近ということである。

「右近にとって茶室は祈りの間であった」という。
茶の湯の中に右近は何を見ていたのだろうか。
茶の湯の道の中に、キリシタンとして何を求めていたのだろうか。

私が作陶テーマとしてきた「茶道と十字架」は、
大学時代の美学の教授であった増渕宗一先生の著書の影響を受けている。
今から20年ほど前に出版された「茶道と十字架」増渕宗一・著(角川書店)には、
カトリックのミサと茶道に酷似しているものを見出し、千利休が確立した侘び茶と、その時代、利休の周辺にキリシタンが多いことなどにも触れている。
茶道とミサとの共通点については、多くの著書もあるし、また高山右近についても専門家による研究がなされている。

茶の湯を茶道とも言うが、「道」というものには、人としての修練や精神的な鍛練などを含むものと私はとらえている。しかし、学生時代、母から「お茶を習いなさい。」と何度も言われたが、当時はゴルフ部に所属していたし、日本の文化として茶の湯に興味はあっても、お稽古事として茶道に踏み込む気持ちは全くなかった。むしろ私は、精神的には世阿弥の能の世界に惹かれ、「仕舞」のお稽古に青山まで通っていた。

カトリックの洗礼の恵みをいただいた日。
私は仕舞のように、和服姿で白足袋で教会のスリッパは履かず、祭壇へまっすぐと歩むことを選んだ。
洗礼・堅信ともに、クリスチャンネームは「Maria Gratia」をいただいた。その後、在世フランシスコ会の誓約も修道名「Maria Gratia」。
「Gratia」「ガラシャ」はラテン語で「恩寵」であり、玉川大学でお世話になった佐藤先生が、「細川ガラシャ」にちなんで考えてくださった洗礼名だった。

細川ガラシャについて、学んでいるうちに、ガラシャをキリシタンに導いたのが「ユスト高山右近」だった、ということを知り、「私の井戸茶碗」として、ガラシャと右近の銘をつけて残したいと念ずるようになった。

右近の生きた時代、高麗茶碗を所持した大名や茶人たちの名が伝世の高麗茶碗となって四百年以上も大切に現在へと伝えられている。「利休」「細川」「有楽」「松平」「三好」「信長」「金森」「少庵」「江岑」などである。

高山右近が所持したものである茶碗というのは、見当たらない。ならば僭越ですが、私は迫害の中、キリシタンとして棄教することなく、すべてを捨ててマニラに行き召された「右近」の茶碗を私の一碗として残したい、と願った。ガラシャの霊名をいただいたご縁で、そう念じるほどに右近の信仰に感銘を受けたのだった。しかも右近は利休七哲、大茶人である。二畳の床の間もない茶室が右近の祈りの茶室であったと聞いている。マニラに向かう折には、千利休から贈られた「羽箒」と「十字架」の二つだけを所持していたという。

右近にとって、「茶の湯」と「信仰」は一つの道だったのだ。

15年ぶりに、茶の湯の師のもとを尋ね稽古に通っている。
右近が帰天したのは63歳とのこと。
茶陶の勉強のために始めた茶道だったが、今、茶の湯の稽古は、私の至らなさ、何にもまして、ありのままの自分、鍛錬の必要な自分というものを、よく見せてくれる。謙虚であることを肝に銘じよ、と教えてくれる。

沈黙のなかで、ただ釜をかけ茶を点てる。その所作のなかに、自分自身がありのまま投影される。顧みるたびに、様々なことに気づきを与えられる。茶を点て、いただくという所作の中に、ありのままの自分が映し出されるのだ。

今は、茶陶を作るためではなく、一人の人間として茶の道による修練を積むという思いが強くなってきている。もちろんモノづくりとして、自作の道具を使ってみるということもあるが、その向こうに、右近の茶を見ている。届かぬだろう小さい人間であるが、私の道として右近の帰天までの信仰を黙想しつつ、床の間の祭壇の前で、茶を点てる。大井戸茶碗を挽く時には、精神の弱っている時は本当にダメだ。ダメなものはダメ。痛感している。「よし!今日だ!この状態の今だ!」という時がある。技術の向こうにあるもの、それがなければ・・・という、それ。それが感じられなければ、私は一生、私の井戸茶碗に「右近」の銘をいただくことはないだろう。

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posted by 丸山 陶李 at 22:20| Comment(0) | TrackBack(0) | 夢は枯野を
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