2017年09月07日

「井戸茶碗一考察」 井戸茶碗を粗質白磁と捉えて

8月26日(土)麗香茶課 特別講座
「井戸茶碗の魅力から探る、日本人の美意識
 〜心に響く茶のうつわとは〜」


「作り手」としてお話しをさせていただきました。

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朝鮮王朝古窯址の陶片、私の井戸茶碗も展示しました。
講座のお話しは尽きることなくタイムオーバー。
井戸茶碗に特化した講座、30名の定員が満席になりました。
お暑い中、お足運びいただき、聴講ありがとうございました。

講座を依頼されたことによって、準備の段階で、私自身、「井戸茶碗一考察」に加えることを、
新たに気付かされました。

1. 井戸茶碗(粗質白磁)「下品」それは両班用だったのではないか、ということと、
2. 粗質白磁の轆轤目は挽きっぱなしで、轆轤目を「消さなかった」こと(手抜き)、
高台内も一削り(手抜き)、白磁(上品-王室用)(中品)の高台は丁寧に削られている。

白磁碗を基本に粗質白磁としての井戸茶碗を考察すると、「井戸茶碗には何故ろくろ目があるのか?」ではなく、轆轤挽きの過程で轆轤目はできるが、それを丁寧に消さなかったのが粗質白磁・井戸茶碗である、ということが言えると思います。

井戸茶碗は白磁の「下品」のもので、両班用に作られた重ね焼きのもの、(粗質白磁)
そして純白磁より精製度が劣る「中品」官需用の「目跡のないもの」で、トチン・ハマに一個置きして匣鉢は使われず焼成されたもの。それらではないだろうか。
轆轤目も消さずに、脇取りをして一気に仕上げてしまう。
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井戸茶碗(陶李作)脇取り
轆轤での水挽き時、切り放す前に削ってしまう。
朝鮮陶磁には、脇取りをしているもののほうが、珍しい。

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左・白磁(中品) 右・井戸茶碗「細川」畠山記念館 蔵
いずれも、同じ大きさで、左の白磁は高台も丁寧に削られ、胎土も細かく精製されている、
しかし、いずれも匣鉢焼成ではなく、窯の炎の影響を受け(窯変)日本人の好む、青と枇杷色の発色が美しいい景色をなしている。
左・脇取り無し。 右・脇取り有り。


胎土や釉薬の精製が粗雑だったこと⇔不純物の効用→梅華皮カイラギ。。
重ね焼きの目跡が見込みにない大井戸茶碗、それらは「中品」(官需用)であった可能性を否定できない。

【王朝管理窯や地域窯に限らず、白磁や粉青沙器などの朝鮮のやきものは、三つに分類できる。
焼く時に施される手間や、使われる胎土や釉薬の精製に応じて三つのランクに区分できる。
王室専用御器 上品
宮中・高位高官用 中品
宮中の一般官吏(両班)用 下品
と思われる。】
(【 】内は、「高麗茶碗 論考と資料」金巴望 より引用 )


-----匣鉢による焼成と直炎のあたる匣鉢なしの焼成で考えられること-----
純白磁(上品)-中級の白磁(中品)-粗質白磁(下品)
匣鉢有(上品)-匣鉢なしハマ(中品)-匣鉢なしトチン(下品)
一つ焼き(上品)-一つ焼き(中品)-重ね焼き(下品)
精製された土・釉薬(上品)-精製が純白磁より劣る(中品)-精製が粗い(下品)
還元焼成(上品)匣鉢による-
炎にふれる(中品)酸化・還元・中性炎-
炎に触れる(下品)酸化・還元・中性炎
 ※中品・下品は窯変がでやすく、炎の酔いがでると酸化の枇杷色発色となる。白磁の還元焼成の失敗ともいえる。
左・還元焼成の白磁 右・中性炎焼成の白磁 
同じ窯・同じ胎土・同じ釉薬・窯の場所のみ違う。
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3. 「脇取り」が、井戸茶碗を井戸茶碗たらしめている。これは前から言い続けてきた。
しかし、すべてではない。

特徴と言われるものや約束は、すべてに共通して表れているわけではない。

それが、井戸茶碗であり、おそらく、
4. 記録に残っているように、飢え死にしそうな匠人が横流しや密売をしていた、これも史実にあること。それで井戸茶碗は日本にしかないのではないか。

5. 白磁をとろうという窯で、不良品(釉薬の精製の度合いがよくないためのカイラギ、土の精製の粗さ、消さないままの轆轤目、丁寧な仕上げを省略した手抜き)、それが井戸茶碗ではないか。

ソウル国立博物館で、ソバンと白磁。
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クッサバル 大井戸の大きさと形
スルサバル 井戸脇 小井戸の大きさと形

【追記】
★「女性」がロクロを挽いていた事実
 陶芸家というと男性のイメージがあるが、女性が活躍していた事実、そして記録によると【奴隷(賎民)】の身分である、
そして教育とは無縁の「文盲」だったゆえ、地域窯の記録文献が残っていない。
しかし、世界のいたるところで「女性」が陶器作りであったことは容易に確認できる。


------------------------ 以下、引用文 -----------------

「高麗茶碗 論考と資料」(高麗茶碗研究会-河原書店発行)金 巴望「李朝のやきものからみた高麗茶碗」※金 巴望 氏 高麗美術館研究所 朝鮮美術史専攻 より。(以下、引用)


『地域窯の窯業が専業であったか、半農半窯であったかは不明である。しかしながら、私は反農半窯が多かったと理解している。
また、男性が力を要する部分を受け持ち、女性がロクロなどの繊細な技術を要するところを分担していた場合もあったと考える。
なぜなら、現在、一六五三年から一六六六年の間に実際にオランダ人が現地にて見聞した記録が残されているからである。一六五三年の八月、オランダの帆船が済州島あたりで難破し、救出されたことがあり、その船員たちは、その後およそ十三年にわたって朝鮮半島の全羅南道に抑留生活を送っている。その際の見聞が船員たちから聞き出され『朝鮮国記』(ニコラース・ウィットセン著)として記録された。
 その中に、(朝鮮の)南海岸には最良の海港がある。同地には多くの男女の奴隷がいるが、皆同国人である。同地には非常に多量の茶が産出する。それは粉末にされ、熱湯にまぜられて、全体が濁るようにして飲まれる。
と記され、さらに陶器についても、同国では陶器がたいへん立派に作られる。特にコップは粗末であるが、(ものによっては)注文に応じて金彩が施されるなど、たいへん珍重され、需要が多い。
と記し、しかも、その大部分は婦人によって作られる。』
と記していることは興味深い。

----------引用ここまで-----------


『井戸茶碗の魅力から探る、日本人の美意識 〜心に響く茶のうつわとは〜』麗香茶課特別講座
当日の講座について、以下の三つのブログでレポートされております。

「井戸茶碗」の魅力を探る、麗香茶課特別講座Cha-No-Yu China 中国茶と和の粋

心に響く茶のうつわとは 神融心酔

「井戸茶碗の魅力から探る、日本人の美意識 心に響く茶のうつわとは」 おうち茶館


お世話になりました。ありがとうございました。
タグ:井戸茶碗
posted by 丸山 陶李 at 14:42| Comment(0) | TrackBack(0) | 井戸茶碗