2013年01月15日

千漢鳳先生の仰ったこと/井戸茶碗一考察/枇杷色



再掲ですが、聞慶窯「千漢鳳(チョンハンボン)」先生が、63歳の時点でNHKのドキュメンタリーの中で「井戸茶碗は、厚い口造り、梅花皮(かいらぎ)、兜巾(ときん)など色々言われるが、一番難しいのは枇杷色です。」と、仰っています。

私は、新年の初窯を焚く前に、テスト焼成を8回しましたが、
聞慶での千漢鳳先生の「茶碗の難しさ」の話を窯焚きの最中に拝聴させていただいた言葉と相まって、
脳裏にあったのは、このビデオの中で千漢鳳先生が「枇杷色」が、何故一番難しいと仰っていたのか?ということでした。

10月に韓国・慶南茶碗公募展の審査員として渡韓した際、
現地でいただいた資料や、現地で高麗茶碗・井戸茶碗の制作をしていらっしゃる皆さんの茶碗に触れ、
韓国の伝統的な窯と、焼成について、改めて気づいたことがありました。

それは、高麗青磁をはじめ「還元焼成」の窯であり、焚き方であることを伝統としているということでした。聞慶伝統の窯は、「マンデンイ窯」呼ばれている(マンデンイとは足のふくらはぎ)土を丸めて窯のアーチを築いている登り窯で、慶南でいただいた資料の中で「中国の青磁と韓国の青磁の違いは、「窯」にある。」「中国の窯は煉瓦であるが、韓国の窯は伽耶文化の鉄を作り始めた技術によるもので、土で構築されている。」と、書かれていた。

千漢鳳先生の窯と窯焚き(2012年・聞慶
「酸化の窯を焚いているので、全部開け放っています。」と仰っていました。
http://www.facebook.com/tourijp#!/media/set/?set=a.355461354508156.85491.149529588434668&type=3

伽耶文化は、私も現地で伽耶土器の美しさに触れ、伽耶文化が鉄を作る技術を持っていたことを博物館を訪れた時に学んでいた。

テスト8回の焼成で、私は同じ土・同じ釉薬で焼成パターンの変化だけで---「酸化・中性炎・弱還元・還元・還元落し・焼き戻し」--- 高麗茶碗の種々の窯変の美しさが現れることを自身で確認した。それは、御本手・半使・片身替わり・紅葉・鹿の背などであった。

韓国での古陶磁を見ても、それほど多くの種類の土を使ってはいない。
黒土・白磁の土・赤土・枇杷色の土、そして軟質白磁の土。これらは「土」でもあるし、カオリンでもあるし、陶石でもある。

聞慶では「井戸茶碗の土は採れないんです。」と、千漢鳳先生の御嬢さん二代目「陶泉」が私に少し悲しげに話してくださったが、それでも、韓国国内であれば、慶南の土も私たちよりも得ることができるだろう、と私は考え「そうでしたか。」と申し上げましたが、千漢鳳先生の高麗茶碗は日本人の好みを良くご存じで、品格のある茶碗は先生の「茶碗の難しさ」の話と重なり、シミジミとするものをお持ちだと感じていた。

その千漢鳳先生が「枇杷色が一番難しい」と仰ったことに、私はずっと「何故だろう?」と思っていたからである。

そして、昨年ようやく深い意味を洞察した。
井戸茶碗の枇杷色を得るには、「焼き」が一番、難しいということ。
それは、電気窯以外では純粋な酸化焼成というのはあり得ないが、薪窯では焼成の技術はもちろんだが、酸化焼成が難しいということ。それを仰ったのだと。

慶南の井戸茶碗に取り組んでいる陶芸家の一人から、
「1250度で20時間引っ張ります。」と伺った時には、思わず「梅花皮が融けてしまいませんか?」と私は問い直した。

別の現地の陶芸家は、
「1300度で酸化焼成(もちろん薪窯)でも、この土の枇杷色は失われない。」
と伺った。成分分析表も添えられた資料(福岡で分析)には、「チタン」の含有量が特徴的ということが記載されたいたが、だからといってチタンを加えれば高温での枇杷色が失われないというものではない、それが、特徴である。」とも書かれていた。

テスト窯を焚くわけでもない、かつて中性炎気味になる窯内の場所で井戸茶碗や蕎麦茶碗の枇杷色発色の茶碗たちが生まれたということは、日本にある井戸茶碗の数々を拝見して、理解できていたが、薪窯の高温で枇杷色を得ることが、元来、還元焼成を得意としていた韓国の窯ゆえ、酸化焼成にする焼成技術・窯焚き技術が必要であったと、千漢鳳先生の仰っていた、「井戸茶碗は、厚い口造り、梅花皮(かいらぎ)、兜巾(ときん)など色々言われるが、一番難しいのは枇杷色です。」という言葉の裏にある、重さを再認識した。

※追記

 唐津焼きの第13代中里太郎衛門氏は、「陶工陶談」の中で、
 「カオリンは20パーセント以上陶土に含まれると鉄分の発色を吸収してしまう。」ということを書いていらっしゃいます。慶南の現地陶芸家のひとり金南珍氏は、「慶南の特色ある陶土は、よく用いられているピンクカオリンとも異なる土であり、単味で用いて1300℃の酸化焼成をしても、この枇杷色は失われることはない。特色ある土である。」と言っています。


ビデオの中で、千漢鳳先生が釉掛けしている場面がありますが、韓国の多くの陶芸家は現在「生掛け」ではなく素焼きをして施釉しています。
NHKのナレーターは「梅花皮は釉が厚くかかったところにできる。」と言っていますが、李朝の井戸茶碗の施釉は、それほど厚くしていないことは、実物。を見るとわかります。井戸茶碗の梅花皮は「削ったところにでる。」というのが正しい認識になりつつあると思います。
梅花皮を出すことに焦点をあててしまっている現代の井戸茶碗をたくさん拝見して来ましたが、梅花皮を狙っているがために、施釉時の釉薬濃度が濃すぎて枇杷色の発色が得られる胎土を用いているのに、土の色を生かすことが二の次になっている茶碗がたくさんありました。
梅花皮を派手にだそうとするよりも、小貫入のでる焼成、釉薬濃度、焼成の窯の雰囲気が大切だと私は結論をだしました。古陶磁のもつあの肌合いに近づくには、原材料と上記の点の追及が重要であると思います。
荒い大きな貫入や、貫入のないものは、この中のいずれかの問題をクリアしていない、わかっていないと思います。
タグ:井戸茶碗
posted by 丸山 陶李 at 18:29| Comment(0) | TrackBack(0) | 井戸茶碗

2013年01月11日

井戸茶碗

2013年初窯の井戸茶碗。

井戸茶碗 口径14.5cm 高8.5cm 高台径5.5cm 重280g

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大井戸茶碗「瑞雲」口径16-16.5cm 高9cm 高台径6cm 重400g
「瑞雲」めでたいことの前兆として現れる雲。祥瑞の雲。

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口縁に傷が入ってしまったので、きずざえもん 喜瑞左衛門。
タグ:井戸茶碗
posted by 丸山 陶李 at 14:43| Comment(0) | TrackBack(0) | 井戸茶碗

2013年01月04日

井戸茶碗一考察・釉掛け

井戸茶碗の釉掛けの最中にワンショット。
以前、代がかわってからの熊谷陶料さんから電話をいただき、
会話の中で「釉掛けは、どうやってたんだろう?」とご質問があったのですが、

私は、
「粉引の火間(掛け外し)ができるやり方と同じです。」
とお答えした。

多くの高麗茶碗、実物を見れば納得できることかと思います。
見テ知リソ知リテナ見ソ。
最近、この思いを深くしています。


釉掛けは「生掛け」。
この写真のように指で茶碗を掴み、釉薬を生掛けする。
(素焼きしてある茶碗なら難なく掛けられますが、生掛けだと下手すると崩れます。)
指跡が残っていない井戸茶碗は、このようにワシ掴みして釉掛けしています。
茶碗の正面に口縁から釉ダレができます。

井戸茶碗の多くは高台に指跡が残っていないのは、この釉掛けのやり方だからです。

「素焼きしてある」というのは頭洞里の古窯址に素焼きされた陶片がたくさん落ちていたからだと思いますが、黄瓷の流れを引くものが井戸茶碗の源流であるとすると(古陶磁の調査資料等には、黄瓷の焼かれた民窯云々・・・とあります。)井戸茶碗に関しては伝統的な黒釉と同じく「生掛け」であったと思います。

年寄りの赤く腫れた手など晒したくないのですが(笑)、
たまたま、釉掛けをしていて井戸茶碗に「火間」ができてしまったので、
ブログにアップします。

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posted by 丸山 陶李 at 16:03| Comment(1) | TrackBack(0) | 井戸茶碗

2013年01月02日

2013年

明けまして おめでとうございます。
2013年、今年も宜しくお願い申し上げます。

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posted by 丸山 陶李 at 16:59| Comment(0) | TrackBack(0) | 夢は枯野を