2011年08月17日

大井戸茶碗の轆轤成形

今年5月に韓国・聞慶伝統茶碗祭りで、USから招待されたLee Love氏が撮影しYou Tubeで紹介している「大井戸茶碗の轆轤成形」ビデオです。

轆轤を挽いているのは、聞慶の陶芸家Yeon Tae Park氏です。
以前、このブログで人間国宝「金正玉」氏と韓国名匠「千漢鳳」氏の動画も紹介しましたが、お二人とも独特の形状をした手作りの「牛ベラ」を用い、「蹴轆轤」による成形でした。

今回のYeon Tae Park氏の轆轤成形は、牛ベラではなく木ゴテにより茶碗の「見込み」と「轆轤目」を仕上げています。そして、伝統的に聞慶の陶芸家は「糸切り」をせずに「高台切放し(箆起し・箆切り)」をしています。高台を絞込み、井戸茶碗は轆轤上で、すべての形が決まっていることがわかります。

このビデオでは、電動轆轤によるデモンストレーションですが、Yeon Tae Park氏は、「蹴轆轤」大会でも優勝しています。

posted by 丸山 陶李 at 14:22| Comment(0) | TrackBack(0) | 井戸茶碗

2011年08月16日

井戸茶碗を捉え直す

韓国・頭洞里の4-500年前の「カイラギの出た陶片」もともと焼成不足で物原行きとなったものであろう。
この陶片を1,200℃で焼成テストした画像。
1,200℃でも「生焼け」である。

WoongCheonYo-1200.jpg

頭洞里で多くの陶片に囲まれた毎日を振り返ると、一番目にとまったもので多かったのが「生焼け」の陶片だったように思う。粉青沙器、白磁、青磁、黒高麗(黒天目)、井戸。そして、「素焼き」の陶片。
それらの陶片を目の当たりにして、「生掛け」信奉者(笑)であった私には、井戸茶碗について、「素焼き」をしていたことも見受けられることから始まり、根本的に考えなおしてみようと思ったきっかけともなった旅だった。

体も頭も忙しい(笑)、考えては土を練り、考えては釉薬を調合しなおし、考えてはテスト焼成し、考えては資料を読みあさり、ネットで検索し、轆轤を蹴りながらも、様々なテーマが小さな私のCPUに、ドッと押し寄せてくる。焼成したテストピースの画像を撮影しては、データを書き残し、パソコンデスクも食卓も陶房もテストピースで溢れてしまった。

「思うところがあって」「考えることがあって」やっていることなので、「片付ける」という感覚は今のところ毛頭ない(笑)。家族に「動かさないで」と頼んで、置かせてもらっている。以下、様々同時進行で考えなおしているポイント。

「生掛け」⇔「素焼き」
「長石」⇔「陶石」「陶土」(水乙土)
「釉石」⇔「できたら同じ原料を探したい」
「御本手の焼成パターン」⇔「白磁(酸化)の焼成パターン」
「枇杷色」⇔「白」「赤」「茶」「枇杷色」
「陶器」⇔「半磁器」「磁器」
「粉引」⇔粉引茶碗に分類されている「楚白」「有来」は、どうやら粉引ではなく、高麗白磁や李朝白磁に近いのではないか?茶黒色の胎土に白化粧ではなく、白いカオリン土に不透明な釉薬が掛けられており、「火間(掛け外し)」は、経年使用によるカオリンの色の変色ではないのか?
「小貫入」⇔「攻め焚き」に入るタイミングが「早すぎる」と貫入は大きくなる。小貫入は「攻め焚き」のタイミングを考慮すると納得できるものが得られた。
「長石釉」「陶石釉」⇔「灰釉」


李朝陶磁器は、その目にする感覚や手に触れた感触が柔らかく、静かな佇まいから、甘い焼き物と思われているが、カオリン質の陶土は白磁の焼成パターンと同様であり、そんなに柔な焼き物ではないことも再認識した。以前私は、カイラギの出方も生焼けででたカイラギではなく、焼き抜かれたカイラギを目指したいと書いたことがあるが、焼成カロリー、冷まし方も再考(オリジナルの窯の焼成冷却雰囲気を再考)。

参考に大西政太郎先生の書籍に提示されている「高麗白磁や李朝白磁の焼成パターン」と文章を引用させていただく。

001s.jpg

「珪土質の陶石ではなく、礬土質のカオリンを主体とした磁器土を用います。その焼成方法も一般的な酸化焼成法では、カオリンの質の柔らかい質感の磁器は得られないので、上記の表に示すような焼成パターンによらなければなりません。」(引用「陶芸と釉薬」より)

直近に焼成した「白い井戸」テストピース。これと同質なものが「粉引」に分類されている「有来井戸」「楚白」ではないだろうか??上記の「白磁(酸化)の焼成パターン」により、1,250℃で焼成した。小貫入が思った通りに現れてきた。(貫入がわかるように数時間紅茶を入れて洗い流し、その後放置、一日後にはハッキリと小貫入がわかるようになった。窯出しした時には、ただの真っ白い陶器だったが、紅茶を入れた部分にほんのりピンク色が滲んできている。
shiroido-test.jpg

こちらは、頭洞里から持ち帰った「三白土」に「灰」を少々添加しただけの釉薬をかけたテストピース。
「三白土」自体に、釉薬が縮れる成分が確認される。
sanpakutoglaze-surface.jpg

高麗・李朝の焼き物について、つくづく考えなおしたいのは、「特別なことはしていない」現地にある原材料で、主に「土」を主体にした灰釉の伝統であること。このテストピースを見ながら、私は自分の井戸茶碗の胎土と釉薬を根本的に見直し、考えなおし、変えました。直近のテストピースの胎土と釉薬、そして焼成パターンで、素焼きをしてから焼成してみようと考えています。一窯をダメにしたくはないので、慎重な上にも慎重を重ね、テストを繰り返して土と釉薬の調整をしている。昨日、ゼーゲルコーンを買い求めたが、3.11の震災によってゼーゲルコーンの会社が閉鎖し、すでに手に入らなくなっている。昔、代わりにオルトンコーンを使ったことがあるが感触は違っており、使い慣れたゼーゲルコーンが手に入らなくなったのは痛い。
posted by 丸山 陶李 at 15:02| Comment(0) | TrackBack(0) | 井戸茶碗

2011年08月04日

井戸茶碗の釉薬再考

ピカピカじゃない。うす膜のはったような釉薬。
しかも梅華皮がでる。
韓国の頭洞里で、多くの陶片を毎日手にとり眺めつつ、
粉青沙器の釉薬のテカリのない、あの独特の釉薬の原料が水乙土によるものだと知ってから、
風化長石なら、ピカピカにならない釉薬になるかな?と再考してみたり、
今日は、実際に韓国で掘ってきた三白土を単味で釉薬にしたテストをしようと考えた。

sanpakudoyu.jpg

ピカピカにならない、しっとりとした釉肌。油揚手とも呼ばれる井戸茶碗の釉薬。
多くの陶片の中に、高麗青磁の一つの茶碗が目にとまった。

これは・・・。
IMG_5611.JPG
通常、高麗青磁は釉薬を厚く掛け、胎土の鉄分との反応により、還元焼成で美しい発色が得られるものと考えてきたが、この陶片をまじまじと見ていると他の青磁陶片と違い、薄く掛けられた釉薬自体が、この発色をしているように見える。何か、そういう釉石、あるいは土があるのだろうと考えた。水乙土の鉄分の含まれて黄色いものは、青磁に使うとも学んできた。

その発想の中から、胎土と同じ土(石)を釉薬にも用いているのではないか?と私の思考は進んでいった。
古唐津の焼き物について、非常に興味ふかい、示唆に富んだサイトを見つけた。古唐津の道園も、韓国の陶工が当地で焼き物を焼いた場所だ。一部引用して紹介させていただく。

道園の陶土と釉薬が解ったのは、偶然の事からである。道園窯跡の横を、細い溝と云うほどの水の流れが、二百メートルほど下の小川に注いでいる。その接点になっている所に、山から迫り出した岩がある。何気なくその岩を見ていたら、その一部分が崩れ落ちていた。黒い岩だと思っていたのは、表面を覆っている苔のせいで、白い岩だと気がついた。手にとって見ると、砂岩の様でもあり頁岩の様でもある。とりあえず持って帰り、乳鉢で擂り潰してみると粘土の様になる。そこで残りの岩をボ―ルミルに入れて微粉砕し、促成の陶土を作った。轆轤にかけると、どうにか成型できる。乾燥を待って試験焼きをしてみた。焼き上がった物は、今までに無く道園の陶片に似ている。急いで耐火度試験をして、SK一九番である事を確かめた。やはり古唐津を作った原料は窯の傍にあった。しかしその原料は、粘土状では無かったのである。陶石とも言える形状であれば、古唐津の陶土原料は、粘土状で産出すると思っているので、探しだすことが出来なかったのである。その陶土に灰を混ぜて釉薬とし、SK九番で焼いてみた。陶片と寸分違わぬ釉面をしている。釉薬も別に長石など使ったのでは無く、胎土その物であった。
http://itohya.tripod.com/karktsuyaki.htm

さて、こちらは井戸茶碗の枇杷色のために用いようと決めた原土の画像です。
原土を篩い通ししている時、土の塊りをポコッと割ったら、こんな美しい紫色の発色部分が見つかりました。このまま焼成して、紫色の部分がどのように発色するのかテストしてみようと思っています。
gendo1108.jpg
posted by 丸山 陶李 at 19:30| Comment(0) | TrackBack(0) | 井戸茶碗